契約 資金計画表

何度か来たことのあるオープンハウス笹塚店の応接スペースに通され、出されたコーヒーを片手に静まり返った中で待っていると、これも以前一度あったことのある若い営業所長が腰低めな感じでた現れた。値引き交渉で本社に走ってくれた(はずの)人である。

 

「うちの○○(営業マンの名前)、真っ直ぐ過ぎるところがあるから、この物件を押しすぎてしまったのではないかと思ったのですが大丈夫ですか?」

 

営業マンらしからぬ言葉である。若くして所長になった人はこうなのか…と、恐らくトップ営業マンであったであろう彼のアプローチに戸惑いながらも、興奮もあってかここまで来たらもう引けないとは思ってる。

 

「ダイジョブです」

 

と短めに答えると、眼鏡の奥でニコッと笑い、彼の手元から取り出されたのは値引き後の価格が反映された3枚の資金計画表だった。

自己資金(元手)の金額に応じて作られた資金計画、3パターンのA3用紙3枚。数千万円の大きな買い物が意外にもあっさりな作りの用紙に記されていて、こんなものか、と軽く落胆に似た感覚を覚えたと記憶している。

とは言え、今の自分には命綱みたいなものでもあるし、結果としてくしゃくしゃになるくらいまでお世話になった。

その時まであまり意識してなかったが、土地と建物は別モノである。それぞれが切り離されての資金計画が記されていた。ここで疑問だったのが、先行して土地のローンが始まるという部分である。家が立つまでの数ヶ月間は土地のローンをしはらな分ければならない=マンションの家賃と同時払いになる。正直なところ、これは非常に苦しい。すかさず質問すると、金利分だけ払うことができるということだった。世の中に何万という人が土地購入から家を建てている中で、皆がもし一時的でもダブルで支払いをしているとしたらすごいことだな、と思っていたので納得の一安心。

目を下に移すとローン金利も3パターンで毎月の支払い目安が載っている。もちろん最も低金利の、最も安い月々の支払いしか目に入っていなかった。